硝酸
ハーバー・ボッシュ法によって窒素と水素(空気と水)から作られたアンモニアから
こんどはオストワルト法によって硝酸が作られ、爆薬や肥料が作られます。
ダイナマイトの原料であるニトログリセリンも軍用爆薬のTNTも硝酸から作るわけです。
硝酸 HNO3 は塩酸や硫酸と並ぶ強酸であるばかりでなく強い酸化剤でもあるのが特徴です。
このため 塩酸や硫酸では溶かすことのできない 銅 銀 などの金属も溶かせる反面
鉄 アルミニウム などは 不動態 となって濃硝酸には溶けなくなります。
(このあたりは受験生におなじみのところでしょうか)
・銅と希硝酸の反応
3Cu + 8HNO3 → 3Cu(NO3)2 + 2NO + 4H2O
この反応式はよく出てくるけれど
未定係数法で作っても酸化還元の半反応式を組み合わせても
どちらもかなりややこしい手順になるので覚えてしまったほうがいい
”化学は暗記科目じゃない”なんていきがっていると負け組になる とにかく覚えるが勝ち
・銅と濃硝酸の反応
Cu + 4HNO3 → Cu(NO3)2 + 2NO2 + 2H2O
よく似ているけど微妙に違うので注意
・キサントプロテイン反応
キサントは黄色 プロテインはタンパク質
つまりタンパク質は濃硝酸によってチロシンのベンゼン環がニトロ化されて黄色になる
これをアルカリ性にするとベンゼン環のヒドロキシ基がケト型になって橙色になる
タンパク質の検出反応として有名
硝酸は酸としては強酸なので水溶液中ではほぼ完全に電離します。
HNO3 → H+ + NO3 -
したがって水溶液中に硝酸分子は存在せず 硝酸イオン として存在しており
硝酸イオン は 酸にも塩基にも還元剤にもなりませんが 酸化剤になることはあります
このため硝酸塩の多くは可燃物との混合により爆発する危険があるので
消防法で 第1類の危険物 になっていて可燃物との混合や混載が禁じられています
古代から用いられた 黒色火薬 は 硝石(硝酸カリウム) 木炭 硫黄 の混合物です。
英語における窒素の元素名 nitorogen はここからきています(日本語やドイツ語は違う)
トルエンやフェノールを濃硫酸と濃硝酸(もしくは発煙硫酸と発煙硝酸)の混合物と反応させると
ニトロ化合物である TNT や ピクリン酸 ができます
ただし ニトログリセリン や ニトロセルロース は
グリセリンやセルロースの硝酸エステルであってニトロ化合物ではありません
このように爆薬の原料になる硝酸ですが
硝酸アンモニウムや硫酸アンモニウムは化学肥料になります
先進国は食糧増産の大義名分を掲げながら実際は戦争のために膨大な爆薬を生産してきたわけです
ノーベル賞の財源も戦争によってもたらされた富だったことになります
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