「15族の元素]硝酸塩の電気分解
白金や炭素棒のような不溶性電極を陽極として
硝酸塩の水溶液を電気分解したとき、
陽極からは 酸素が発生し、陽極付近は酸性になっていきます。
これは水が酸化されているためで 硝酸イオンは酸化されません。
硝酸ナトリウム水溶液の場合だと
水溶液中に存在するのは 硝酸イオンとナトリウムイオン
それに溶媒の水分子 ということになります。
硝酸イオンというのは 中心原子の窒素の酸化数が +5 で
これ以上酸化されることはありません
すなわち還元される(酸化剤になる)ことはあっても酸化されることはない
硝酸イオンは水分子よりも酸化されにくい(電子を与えにくい)
ということで、水分子が陽極に電子を与え
2H2O → 4H+ + 4e− + O2
という反応がおこり、陽極からは酸素が発生するわけです。
そして水素イオンが生成するため陽極付近のpHは小さくなっていきます。
陽極が銀や銅の場合だと、陽極そのものが電子を与え
酸化されるので 銀や銅がイオンになって溶け出し
この場合は水素イオンが生成しないので溶液のpHは変わりません
いっぽう陰極では相手の陽イオンが何かによっておこる反応が違います
(陰極での反応は電極の種類に関係ありません))
ナトリウムイオンやカリウムイオンなどの
アルミニウムよりイオン化傾向の大きいイオンの場合
水が還元されて水素を発生します。
硝酸ナトリウム水溶液の場合だと
ナトリウムイオンは水分子より還元されにくい(電子を受け取りにくい)
ということで、水分子が陰極から電子を受け取り
2H2O + 2e− → H2 + 2OH−
という反応がおこり、陰極からは水素が発生するわけです。
陽イオンが銀イオンや銅(II)イオンの場合は電子を受け取りやすいので
陰極にこれらの金属が析出します。
結局硝酸ナトリウム水溶液の電気分解では
陽極で酸化されているのも陰極で還元されているのも水であって
実質的には水の電気分解になっているわけです。
硝酸イオンやナトリウムイオンは全く変化していない
イオン化傾向の大きいイオンというのは
電気分解において水分子よりも安定なわけで
貸そうかなまぁ水素だよ
昇竜の水は酸素だよ
というような覚え方が昔からありました。
ところがここでちょっとした疑問が浮かびました。
硝酸イオンは還元されることはあっても酸化されることはない
ということは
陰極で硝酸イオンが還元される可能性はないのか
ということです。
案の定陰極をステンレスにすると硝酸イオンの還元が起こるらしい
http://www.higo.ed.jp/edu-c/kagakuten/h18list/pdf/130.pdf
やはり硝酸塩は電気分解の例としては適切でないかも